大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和33年(あ)1069号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人五井節蔵の上告趣意第一点は憲法一四条、三一条違反をいうけれども、その実質は単なる訴訟法違反の主張に帰し、上告適法の理由とならない(なお、原判決に所論のような違法のないことは昭和二九年(あ)第一〇七号、同年六月二四日第一小法廷判決、集八巻六号九七七頁の趣旨に徴し明らかである。)。同第二点は憲法三八条三項、刑訴三一九条二項、判例違反をいうが、原判決は被告人の自白のほかに数多くの証拠を挙示しており、これらを総合すれば、本件犯罪事実は優に認定することができるのであって、本件は公判の自白を公判廷外の自白で補強した場合でないのはもちろん、違法な証拠を他の証拠と総合して犯罪事実を認定した場合でもないから、所論はすべて前提を欠き、採用できない。同第三点は憲法三一条違反をいうけれども、その実質は単なる訴訟法違反の主張を出でないものであって、上告適法の理由となし難い(なお、この点に関する原判示は相当であるばかりでなく、原判決は自判に当っては刑法一九条一項各号二項の適用を明示している。)。同第四点は判例違反、憲法三一条違反をいう点もあるが、本件所為が刑法一七五条のいう「猥褻ノ図画ヲ公然陳列シタル」場合にあたることは原判決の説示するとおりであるから(大審院、大正一五年(れ)第七三四号、同年六月一九日第四刑事部判決、集五巻二六七頁、昭和三二年(あ)第四四一号、同年五月二二日当小法廷決定、集一一巻五号一五二六頁参照。)、同判決には所論のような違法はなく、違憲の主張は前提を欠き、引用の判例は本件に適切でない。同第五点は憲法一八条違反をいうけれども、その実質は量刑の非難であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例